「授業UD」へのご招待

くまもと授業UD研究会 

代表  吉見 和洋

例年、東京・筑波大学附属小学校を会場に、全国から小中学校の先生約2000人以上が参加して開催される全国大会を主催する「授業のユニバーサルデザイン研究会」が、昨年1月に「日本授業UD学会」に衣替えしました。「研究会」から発展的に生まれ変わった教育研究のための学会です。

私たち「くまもと授業のユニバーサルデザイン研究会」は、この「日本授業UD学会」の熊本支部として活動しています。平成27年1月に発足しました。これまでに仲間たちと学習会を重ねたり、全国大会に参加したりしながら、この熊本の地で7回の研究大会を開催し、毎回多くの教職員の皆様の御参加をいただき、研鑽を深めてきています。

この度、私たちのホームページにコラム欄を開設することになりました。「授業UD」に取り組む仲間たちが、定期的に「授業UD」に対する思いや理論、実践や書籍文献等の紹介などをしていきます。どうぞよろしくお願いします。

さて、このコラムの第1回として「授業UD」の定義を確認しておきましょう。日本授業UD学会では、「授業UD」を「学力の優劣や発達障害の有無にかかわらず、すべての子どもが楽しく『わかる・できる』ことを目指し、教科における工夫、様々な子どもへの配慮、個に特化した配慮を駆使して行う通常の学級における授業のデザイン」と定義しています。

いわば教科教育と特別支援教育の融合です。「授業UD」は、子どもの学びを阻害する多様な要因や子どもの状況を正しく理解し、その状況に最も適した指導方法を工夫することによって、すべての子どもの学びを保障しようとするものです。

そのため、学習を阻害するバリアになっているものと、その「バリアを除く14の工夫」を、階層図とともに「授業のUD化モデル」として示しています。実践の中から生まれた多様な「工夫」が、教科教育と特別支援教育の視点に基づいてこのモデルに理論的に整理されています。多くの実践者の追試を経て淘汰され、一般化されたものです。併せて、一斉指導における「指導の工夫」、「個別の配慮」、「個に特化した指導」という「三段構えの指導」も示されています。

「授業UD」は、特別支援教育の理念や理論を踏まえながら、これまで積み重ねられてきた教科教育研究を深め、子ども一人一人の学力を保障していこうとするものです。それは、「全ての子どもに楽しく『わかる・できる』を実感させたい」という良心的な教師の強い願いに支えられています。

「授業UD」は、形だけの「手立て」や「テクニック」ではありません。「日本授業UD学会」の桂聖理事長は、「授業UDは哲学である」と述べておられます。まさに「授業UD」は表面的な指導技術の集合体ではなく、「哲学」であり「マインド」なのです。

今、新学習指導要領への移行時期を迎え、これから「主体的・対話的で深い学び」の実現が求められています。「授業UD」は、全ての子どもを楽しく授業に参加させながら、習得・活用の段階を通して「主体的・対話的で深い学び」に導きます。「授業UD」は、今後求められる基礎的・汎用的能力の育成に有効な教育研究であり、教育方法論であり、実践論でもあるのです。

これから、このコラム欄で本研究会事務局員が、「授業UD」の具体的な理論や実践等について発信していきます。是非、一緒に「授業UD」を追究していきましょう。