学級活動の充実と授業のUD

くまもと授業UD研究会 研究部 村田裕紀

 

「学級」とは、児童生徒にとって、学校における「家庭」とも言えるものです。児童生徒は学校生活の多くの時間を学級で過ごします。そのため自己と学級集団との関係は、学校生活そのものに大きな影響を与えます。学級は児童生徒一人一人にとって、学校生活の基盤となるものです。

私は授業UDの成否は、「学級経営」にあると考えます。発達の遅れや障がいの有無に関わらず、どの子にとっても居心地がよく、心理的に安定して過ごすことができる学級。自分のよさが周りに認められ、また、よさを発揮することができる学級。違いや理解のゆっくりさが受容され、間違うことや分からないことを安心して表明できる学級。学級内で問題が起こっても、その問題をみんなで話し合って、サポートし合って解決していこうとする学級。そのような学級にこそ、どの子も楽しく「わかる・できる」授業が成立すると考えます。

明星大学の小貫悟教授は、2012年に「授業のUD化モデル」を提案されました。これは授業を階層的に捉え、つまずきがちな子どもの特徴、およびつまずきに対応する工夫の視点を整理したもので、授業のUDの考え方のベースとなるものです。そこには授業でのバリアを除く14の工夫が示されています。工夫の視点の1つめは、参加レベルにおける「クラス内の理解促進」であり、最後の工夫の視点は、理解レベルにおける「共有化」です。この2つの視点は、まさに特別活動、とりわけ学級活動で大きく育まれる資質や能力です。話合い活動により合意形成した実践活動を通して、よりよい人間関係の構築を目指した学級活動の果たす役割は、授業UDに極めて大きいと言えます。

では、どのように学級活動を充実させていけばいいのでしょうか。そこにはまた、授業のUDの要素が必要となります。つまり、どの子にとっても、どの教師にとっても、楽しく「わかる・できる」学級活動の工夫です。私はそのために、『タイム』『プラン』『パターン』の3つの工夫にこだわった研究と実践を重ねてきました。『タイム』とは、時間内の集団決定と話合い活動の時間の構造化。『プラン』とは、魅力ある議題と実践活動づくり。『パターン』とは学級活動一連のサイクル化と合意形成のシステム化です。

今回の学習指導要領の改訂で、小中学校ともに、児童生徒への自治的能力の育成や主権者教育の観点から、特別活動における学級活動(1)の重要性が明確にされました。「忙しくて、学級活動にあまり準備の時間をかけられない。」これまでそういう声を残念ながら聞いたことがあります。しかし、忙しいからこそ、特別活動、学級活動なのではないでしょうか。特別活動において「自主的・実践的」、学級活動において「自発的・自治的」力を育むこと。真に『学びに向かう集団づくり』、また『学びの土台』としての学級活動の充実が、授業UDの成立につながるのです。

本コラムで紹介した、『タイム』『プラン』『パターン』の3つの工夫にこだわった実践は、第3回 授業UD学会 全国大会、授業プレゼンテーションにて紹介します。発表テーマは、「みんなが楽しく『わかる・できる』学級活動の提案~UDの視点に基づく小学校学級活動の工夫~」です。一緒に「わかる・できる」学級活動を考えていきましょう。9月16日、是非お越しください!!