御船中学校 教諭  山本 貴一
 「はい、今日の授業は〇ページから・・・」という導入を、以前は平気でやっていました。今考えると、何とも魅力を感じない、授業の始まりです。子どもの立場に立ってみると、「あー、また今日も先生のおしゃべりの始まりか・・・」と落胆したことでしょう。
 授業UDに出会って、私が最も変化したのは授業の「導入」です。これまでの自分の実践を振り返った時、どれだけ、一部の子どもたちと授業をやってきたことか。「全員参加の授業をしたい!」と考えた時、とにかく導入で、子どもたち全員をひきつけたいと思うようになりました。
 導入の工夫を色々試みました。私は中学校の社会科の教員です。単純に見せていたグラフや写真資料の一部を隠してみました。するとどうでしょう、隠すことで、一気に注目度が高まりました。いつもは見向きもしなかったA君の顔が上がっていました。そして、隠していた部分をじらしながら見せると「なんでそうなるの?」とつぶやきが聞こえてきました。視覚化の工夫がA君のつぶやきを導いたのです。私は、自分が魔法使いになったよう気持ちになりました。
 「ダウトクイズ」を取り入れました。子どもたちに、前の時間に学習したことの中に間違いを入れてクイズとして発表させました。すると、不思議です。私が一方的に説明するより、みんなはるかに集中して話を聞いていました。挙手が苦手なBさんがすっと手を上げました。発問の焦点化がBさんの挙手を導いたのです。私は、手品師になったような気分になりました。
 私は、授業UDに出会うまでは、「自分の説明で授業を何とかしよう」と考えていました。授業の主役は「自分」だと考えていたのです。しかしそれは、間違っていました。授業の主人公は子どもたちです。そしてその主人公である子どもたちが「謎解きの旅」にでかけるのが授業だと感じています。導入は謎解きの旅のほんの入り口です。
私たち教師は、魔法使いであり、手品師です。それも、自分が自己満足を得るための魔法使い、手品師ではなく、子どもたちを旅へ誘うそれらです。
 授業は「謎解きの旅」。私の旅(授業づくりの旅)も始まったばかりです。